競業避止義務に違反したら、損害賠償金の請求、退職金の減額や不支給とするなどの措置について
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企業は、業務上の機密やノウハウ等を守るために、従業員に競業避止義務を課すことがあります。
競業避止義務は、業務上の機密やノウハウ、特殊技能を身につけた従業員がライバル会社に転職することや、業務上の機密やノウハウ等を使って自らが業をおこし事業を始めることです。
そもそも憲法では、職業選択の自由は基本的人権として保障されており、競業避止義務が従業員の職業選択の自由に重大な制約をするものであれば、無制限に認められません。
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裁判例;
フォセコ・ジャパン・リミテッド事件(奈良地裁判昭和45.10.23)
「競業の制限が合理的範囲を超え、債務者らの職業選択の自由等を不当に拘束し、同人の生存を脅かす場合には、その制限は、公序良俗に反し無効となることは言うまでもないが、この合理的範囲を確定するに当たっては、制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる職種の範囲、代償の有無等について、債権者の利益(企業秘密の保護)、債務者の不利益(転職、再就職の不自由)及び社会的利害(独占集中のおそれ、それに伴う一般消費者の利害)の三つの視点に立って慎重に検討していくことを要する。」
キヨウシステム事件(大阪地裁判平成12.6.19)
「競業避止の内容が必要最小限の範囲であり、また当該競業避止義務を従業員に負担させるに足りうる事情が存するなど合理的なものでなければならない。」
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退職後の競業避止義務は、在職中の場合とは異なり、何らかの特約といった明文化された根拠がなければ認められないと解されています。
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裁判例;
中部機械製作所事件(金沢地裁判昭和43.3.27)
「習得した業務上の知識、経験、技術は労働者の人格的財産の一部をなすもので、これを退職後にどのように生かして利用していくかは各人の自由に属し、特約もなしにこの自由を拘束することはできない。」
池本自動車商会事件(大阪地裁判平成8.2.26)
「会社の取締役及び従業員は、会社との間で退職後の競業を禁止する旨の合意があるなど特段の事情がない限り、退職後、同業他社に就職し、競業する内容の営業活動に従事したとしても、右行為が当然に不法行為に当たるものではないと解すべきである。」
センメイ商事事件(大阪地裁判平成11.1.22)
「原告は、当然導かれる義務として、競業禁止義務を負う旨主張する。しかしながら、労働者は、経済活動の自由を有するのであるから、労働契約上退職後の競業を禁止する旨の特約がある場合を除き・・・、原則として、退職後に従前の使用者と競業する内容の営業を行うことも許されると解される。」
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競業避止義務に関する規定や誓約書の作成において重要なことは、その内容に合理性があるかどうかです。
合理性がなければ無効となり、何の役にも立ちません。
では、実際に競業避止義務違反が行われた場合にとりうる措置についてですが、退職金の減額又は不支給、競合行為の差止め、損害賠償請求等が考えられます。
・退職金の減額、不支給について
退職金規程に、退職後の競業行為をした者には退職金の不支給又は減額をするということを明確に定める必要があります。
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三晃社事件(最高裁第2小判昭和52.8.9)
「被上告会社が営業担当社員に対し、退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業選択の自由等を不当に拘束するものとは認められず、したがって被上告会社がその退職金規則において、右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ有することをかんがみれば、合理性の無い措置であるとすることはできない。…すなわち、この場合の退職金の定めは、制限違反の就職をしたことにより勤務中の功労に対する評価が減殺されて、退職金の権利そのものが一般の自己都合による退職の場合の半額の程度においてしか発生していないこととする趣旨であると解すべきであるから、右の定めは、その退職金が労働基準法上の賃金にあたるとしても、所論の同法第3条、16条、24条及び民法第90条等の規定にはなんら違反するものではない。」
ベニス事件(東京地裁判平成7.9.29)
「退職金の減額支給条件が抽象的であって、一義的に理解できない場合は、規範的役割は希薄なものでしかないのであるから、背信性が強い場合に限りその適用を許すべき。従って、退職金の減額は許されない。」
東京コムウェル事件(東京地裁判平成15.9.19)
「退職金規定に明示されない重大な就業規則違反等の事由をもって退職金不支給の事由とすることはできない。規定の不備による不利益は、これを制定した使用者において甘受すべきである。」
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・競業行為の差止め、損害賠償請求について
退職時の競業避止義務を約する特約を根拠に請求することが可能です。
しかし、誓約書があれば直ちに、競業避止義務違反を認められるというわけではありません。
その誓約書の内容が、公序良俗に反しない明確で合理的なものであることが必要なのはもちろんですが、誓約書を作成される過程も問われます。
特に退職時の誓約書は、その内容が客観的に見て一方的に労働者にとって不利である場合、たとえ署名があっても、本当に労働者の自由意志からの行為であるとは判断されないことがあります。
労働者の退職後の行為を規制する誓約書を有効なものにするためには、誓約書をかわすことによって生じる労働者の不利益に見合った代償措置を講じる必要があるといえます。
そこで、
・競業避止契約契約の前提となる秘密保持契約でいう秘密の性質や範囲が重要なものに限定されているかどうか、
・その従業員が在職中企業秘密の内容・利用方法・重要性を認識し得る地位にあったかどうか、
・競業を禁止される業務の範囲が在職中その従業員が担当していた職種に限定されるかどうか、
・退職後の競業避止義務を負う期間が不当に長くないかどうか、
・競業避止義務を負わせる場合に、その代償措置が執られているかどうか
などを検討して、真にやむを得ない範囲のものに限定した上で、かつ一定の代償を支払うことで競業避止契約義務を課す契約にすべきです。
なお、競業避止義務に関する規定や誓約書の無い場合の競業避止義務違反への対応は、不正競争防止法に基づき不法行為として、差止請求権、損害賠償、信用回復の措置という法的措置を取ることは可能です。
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不正競争防止法第3条;
「 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 不正競争によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(侵害の行為により生じた物を含む。第五条第一項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の停止又は予防に必要な行為を請求することができる。」
不正競争防止法第4条;
「 故意又は過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、第十五条の規定により同条に規定する権利が消滅した後にその営業秘密を使用する行為によって生じた損害については、この限りでない。 」
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