従来から従業員の多数で組織する労働組合があるもののその方針に不満を抱いている者たちで新たに別の組合を結成するに際して、手続きのこと、組合員のこと、団体交渉のことについて
----------
労働組合の結成については、行政機関などの許可や届出は必要ではなく、労働組合法に定める一定の要件を実質的に備えているだけで労働組合としての法的保護が与えられます。
労働者の自由意思により結成することができますので、使用者の承認などを受ける必要はありません。
----------
労働組合法第2条;
「この法律で「労働組合」とは、労働者が主体となつて自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいう。但し、左の各号の一に該当するものは、この限りでない。
一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの
・・・・・」
----------
組合員の範囲については、労働組合が独自の判断で自主的に決めるべきことです。
新たに結成する組合において、既存組合が非組合員としている者を組合員に含めることは可能です。
ただし、労働組合は、使用者の利益代表者の加入を認めることはできません。
また、人種、宗教、性別、門地または身分を理由として組合加入を拒否することは許されません。
----------
労働組合法第5五条;
「 ・・・・・
2 労働組合の規約には、左の各号に掲げる規定を含まなければならない。
・・・・・
四 何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によつて組合員たる資格を奪われないこと。
・・・・・」
----------
次に、同一企業内に複数の労働組合が併存する場合、各組合は、それぞれ独自の存在意義を認められ、固有の団体交渉権及び労働協約締結権を保障されています。
使用者は、労使関係のすべての場面で、中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重しなければならず、組合の性格、傾向や従来の運動路線の違いによって差別的な取扱いをしてはなりません。
各組合は、それぞれ自由な意思決定に基づいて、労働協約を締結し、あるいは締結を拒否する権利を有します。
併存する組合の組合員数に大きな開きがあるときは、多数組合の交渉力の方が大きい点を考え、使用者が多数組合との交渉及びその結果に重点を置くようになるのは自然のことであり、一概に不当とすることはできません。
団体交渉の結果、各組合の間に労働条件に関し差異を生じる結果となったとしても、それは、使用者と労働組合との間の自由な取引の場において、各組合が異なる方針や状況判断に基づいて選択した結果が異なるに過ぎず、差異が生じたことをもって、直ちに不当な差別ということはできません。
なお、労働協約の効力は、原則として当該労働協約を締結した労働組合とその組合員にしか及びませんが、複数組合がある場合には例外的な規定があります。
----------
労働組合法第17条;
「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至ったときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。」
----------
この規定は、多数組合とは別に組織されている少数組合にも及ぶのかどうかが問題となります。
学説・判例は、拡張適用を肯定する説と否定する説とに分かれています。
憲法の保障する団体交渉権を少数組合にも保障するという見地から、否定説が有力となっています。
----------
日本メール・オーダー事件(最高裁第3小判昭和59.5.29)
「会社側が一時金を上積みする前提として、生産性向上に協力することという前提条件は抽象的で具体性を欠くものであり、しかも当時の社会的状況の中では労働強化等につながるという見方を否定できないという意味で、問題のあるものであったにもかかわらず、会社側は具体的に何をすれば良いのかについて十分な説明をしていない。したがって、少数組合が受諾できないとしたことには理由があり、反面、会社側がこのような前提条件を付することには合理性がない。組合は、会社側が合理性のない条件に固執しているため、やむなく受諾拒否を選択したのであって、会社の交渉の仕方に原因がある。会社側は、少数組合が受諾しないことを予想しながら敢えてこの前提条件を提案し、これに固執したものであり、しかも、受諾拒否の結果、一時金が支給されず、組合内部に動揺を来し、ひいては組合弱体化を招くことは、容易に予想できたものであり、組合弱体化の意図を有していたとの評価を受けてもやむを得ない。」
日産自動車事件(最高裁第3小判昭和60.4.23)
「不当労働行為に当たるかどうかは、単に、団体交渉において提示された妥結条件の内容やその条件と交渉事項との関連性、条件に固執することの合理性についてのみ検討するのではなく、交渉事項が発生した原因及び背景事情、交渉事項が労使関係において持つ意味、交渉事項に係る問題が発生したのちに労使がとってきた態度等の一切の事情を総合勘案して、判定しなければならない。会社が少数組合員に対し残業を一切命じないとする既成事実の上で、組合との団体交渉を誠意をもって行わず、組合との間に協定が成立しないことを理由として、所属組合員に残業を命じないとしていることの主たる動機・原因は、少数組合員を長期間経済的に不利益な状態に置くことにより、組織の動揺や弱体化を図ろうとの意図に基づくものであったと推断されてもやむを得ない。」
----------
事業所内に複数の労働組合が存在する場合、たとえ少数組合であっても当然に団体交渉権を有しているものと考えられます。
独自に団体交渉を行い、労使交渉を通じて自由な意思決定に基づき合意形成を図っていくことが可能と解されます。
テーマ : 人事労務 - ジャンル : ビジネス